そこに「煙幕」はありませんか:白井聡『戦後政治を終わらせる 永続敗戦の、その先へ』
わた:先だって読んだ『資本主義の終焉と歴史の危機』と重なる部分があり、経済と政治は別々に語ることはできないと感じたよ。
あめ:なぜ学校で現代史を教えないのか。自分が学生の時は単純に授業時間が足りないからと思っていたけど。
わた:戦前の指導者層がそのまま戦後もその地位を保っているのだから、敗戦の歴史を教えられるわけない。
あめ:わかってしまえば単純なこと。こうした単純な煙幕というのは他にもたくさんあって気が付かずに、それどころか気づいてもない振りをしているだけかもしれない。
わた:白井さんの言う永続敗戦とは「日本人はあの戦争に敗れたことを知っているにもかかわらず、本当は負けたと認めていないのではないか」、そのために「ズルズルダラダラと負け続ける状態」と定義されています。
あめ:「テレビ番組は受け手の『常識』の範囲内のことしか写せない。最も保守的なメディア」という指摘は本当にその通りだと思う。
わた:だからテレビでどんな風に太平洋戦争が扱われているかを見れば、その時の「常識」がわかる。
あめ:でも本当に、みなそんなに心地よい側からの眺めしか受け入れられないのだろうか・・・。その「ふり」をしているだけ、と思いたいのだけど。
わた:はっと気づかされた指摘がいくつもあって、すべてをあげられないのだけど、やはり天皇制への様々な言及には目を開かれる思いでした。
あめ:例えば、8月15日以降の戦闘について。玉音放送で戦争終結が告げられたにも関わらずまだ戦争を続ける人々について、我々は負けを認めない頑迷な軍国主義者だと思いがちだけれども。
わた:著者はそうではない、と。そこには天皇制への拒絶があるのだと。「戦局はすでに久しく絶望的だったのであり、戦闘で死んでいった戦友の死も十分無意味だった。それをどうしてくれるのだ、という反逆の思いがあるのだ」と。
あめ:天皇制については、戦後は象徴としてのイメージが強力すぎて、当時、人々がどんな思いを持っていたのかは実は戦後の我々には実感ができない。
わた:しかし一番強烈だったのは豊下楢彦氏の安保条約の起源についての考察だね。
あめ:たしかにロマノフ家は共産主義によって凄惨な最期をとげることになった。その恐怖は生々しかった。
わた:なぜ沖縄をあんなに想われていたのか深く納得したというか、でもとてもショックでした・・・。
あめ:耐用年数を過ぎた戦後レジームが懐かしむのは平和な冷戦時代。
わた:冷戦時代が平和だったというのは逆説的だけれども、確かにあの時代は西側にいれば強固な体制の中、経済成長にまい進すればよかったし、世界ががっちり型にはまっていたから難しいことをあれこれ考えなくてもよかった。
あめ:今は世界が流動的だから、こうすればいい、という正解が政治にもない。与えられた正解の中での振る舞いに慣れきってしまった政治は、自らでの振る舞い方を見いだせずにいる。
わた:歴史の揺り戻しって本当にあるんだな。人が安心できる世界の在り方って、パターンが決まっているのかも。
あめ:強力な反目する勢力の対立があり、その拮抗がもたらす凪。それは拮抗が続けば幸せな時代なのかもしれないって、今の混乱を前に思ってしまうよ。
さらに知識を深めるために。読んでみようと思った本。
吉川元忠『マネー敗戦』
ウルリッヒ・ベック『ユーロ消滅? ドイツ化するヨーロッパへの警告』
豊下楢彦『安保条約の成立 吉田外交と天皇外交』
ナオミ・クライン『ショック・ドクトリン』
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