わた☆あめ 脳内読書会

読書ブログです。ヨーロッパより帰国しました(コロナのばか~!)

ほうずき市の由来に驚愕:『イネという不思議な植物』

『イギリスはおいしい』という本の中で著者の林望さんが日本のパンにふわふわした食感のものが多いのは「主食というものは白くて温かくふわふわと柔らかいもの」という刷り込みがあるからだ、というようなことを書いていらして、とても納得した。日本のパン、あれは炊いたお米の一種なのか。確かに外国では日本のようにフワフワしたパンをあまり見かけない。
そうはいっても、私自身はお米は週に半分くらい食べれば十分で、海外にいた時もお米が恋しくて恋しくてということも特になく、冷凍のクロワッサンなどを喜々として食べていた。

 

ただ食事では「主食」というものを食べるべしという刷り込みは強くて、おかずだけで食事を済ました時は何となく雑な食事をしたような気分になる。そしてその主食となるとやはりお椀に盛られた白いお米を思い浮かべるのだ(ちなみにリンボウ先生曰く、イギリス人の主食はパンではなくてイモだそうだ。イモ。すごく納得)。

 

正直、お米の正式な呼び名がうるち米というのも理解していなくて、おせんべいと団子はうるち米から作られて、あられはもち米から作られることも認識していなかった。あられって、もち米だったのかー(食べる量には気をつけよう・・・)。

 

もち米はうるち米の突然変異で出現したといわれているらしい。またもち米はうるち米と交雑するとその性質は受け継がれずにうるち米になってしまう。加えてもち米は水を吸収しやすくうるち米に比べて保存がきかない。それでも人々はこの突然変異で生まれたもち米をうるち米と交雑しないよう大事に大事に守ってきた。それはもち米が与える幸福感のためで、消化吸収が早いもち米を食べると食後に血糖値が早く上がり幸福感を得られるのだそう。日本人はお祝いの席などで共に餅を食べその幸福感を共同体で共有してきたのですね。

 

そんな幸福感を与えてくれるもち米に近いうるち米を、ということで作られたのがミルキークィーン。これも初めはコシヒカリの突然変異から作り出されたらしい。突然変異といういうと、なんだかまれにしか起こらない大事件って印象を持っていましたが、長い生物の歴史の中ではそう珍しいことではなく、生物に活力を入れるような出来事のようです。農耕の始まりとされる小麦の栽培も実っても種子を落とさない非脱粒性の突然変異から始まったと考えられている。

 

自然界では白い生き物は珍しく、アルビノと呼ばれる突然変異は神聖なもの、神の使いとして大切にされた。
そんな白い生き物のひとつである白鳥は昔話の中ではたびたびお餅にたとえられ、例えば飢饉のときに白鳥がお餅になって人々を飢えから救った話や餅を粗末に扱った長者の家から餅が白鳥になって飛び去ってしまった話などがある。

 

確かにもち米を食べると幸福を感じます。お赤飯しかり、ちまきしかり。お餅は海外でも時々恋しくなって買って食べていました。お米は外国産が売られていましたが、お餅はさすがに日本産しかなくお米よりも割高。でもやっぱりお餅は美味しい。確かに食べると幸せな気持ちになります。今度ミルキークィーンを買って食べてみよう。

 

イネは日本の文化や生活に深く根を下ろしている。

日本人の苗字に「田」を含んだものが多くみられることもそのひとつで、そもそも苗字という言葉も苗という字を含み、イネの苗が分かれて増えるように、子孫も増えて栄えて欲しいという思いを込めてつけられたものだそうだ。

 

何よりも私が驚愕したのが、ほうづき市の由来。7月7日の七夕の節句はほうずきの節句とも呼ばれる。そのほうずきは、なんと昔は中絶薬として用いられていたらしい。この7月の時期に女性が妊娠していると、一番忙しい秋の稲刈りの頃に身重の体になってしまうため、7月7日にはほうずきの根を服用したらしい。

人の子よりもイネの成育が優先されていたなんて驚きだ。

 

 

イネという不思議な植物 (ちくまプリマー新書)

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  • 作者:稲垣栄洋
  • 発売日: 2019/05/17
  • メディア: Kindle版
 

 

 

『イネという不思議な植物』の感想、レビュー(あられさんの書評)【本が好き!】

 

 

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