シベリアを領有することで高まるロシアの悲劇性:中野京子『名画で読み解くロマノフ家12の物語』
わた:滞在先でニコライ二世とその家族の展示会をみる機会があったのよね。
あめ:科学博物館での展示で博物館らしい切り口で血友病についての展示だったね。
わた::それが、またすごくよくてね。
あめ:胸に迫った。辞書を引き引き英語で読んだから、余計にね。
わた:ニコライ二世については、池田理代子先生の『オルフェイスの窓』での知識しかなかったけど、本当に激動の人生だね。日露戦争に革命に、たった一人の皇太子が血友病・・・。
あめ:この皇太子に発現した血友病が大英帝国のヴィクトリア女王が保菌者というのが歴史の残酷さっていうかね。
わた:女子は保菌者になり、男子には半分の確率で発現しちゃう。王家は王家同士で結婚するから。
あめ:世界中の王家に、この血友病の遺伝子が広がった。王家の病と恐れられた。
わた:ニコライ二世のたったひとりの皇太子アレクセイも、その二分の一の賭けに敗れる。
あめ:出産時の臍帯血が止まらないことでそれをわかったって・・・男の子とわかった時の喜びから一転・・・母親のアレクサンドラの絶望はどれほどのものだったろうね。
わた:ビィクトリアの孫であるアレクサンドラが保菌者だからね。
あめ:ニコライはアレクサンドラとの結婚を周囲に反対されたけど、昔からの想い人との結婚を押し切った。
わた:なかなか男子に恵まれなくて10年後にやっと生まれた皇太子が血友病を持って生まれたとは。
あめ:この時からニコライは国家よりも家族に、特に妻と一人息子に心を砕くようになる。
わた:この本はニコライ二世について知りたくて読んでみたんだけど。
あめ:ロシアってシベリアという強烈な場所を領有していたのがこの国の印象を決定づけている気がするよ。
わた:寒くて広くて荒涼としてて・・・人間の尊厳を保つのが難しい場所だね。
あめ:ロシア人が何か罪を犯すと、このシベリア送りになるからね。
わた:冬将軍って言葉はナポレオンのロシア遠征以後に使われだしたってどこかで読んだよ。結構新しい言葉なんだね。
あめ:日本にいると各国の歴史をその国一国の流れでみてしまうけど、
わた:ヨーロッパにいると本当にそれぞれの国の距離が近いんだよね。アフリカも中東も近い。
あめ:地続きの国同士の歴史は一国のみでは語れない。
わた:欧州の各王家にとってのナポレオンの衝撃がどんなものだったか。なんせ大陸の果てのロシアまで攻めて行っちゃうんだから。
あめ:ナポレオンの側近・タレーランの狡猾さについての描写が面白い。
わた:当時のロシア皇帝アレクサンドル一世は金髪碧眼、背がすらりと高く、立ち振る舞いもエレガントで人当たりのいい人だったらしいけど。
あめ:中野さん曰く「彼のような育ち方をした者が、どうして見かけどおりの人間でおられよう」。
わた:中野京子さんの本は絵を入り口にしてその背景の歴史を紐解いてくれる。
あめ:ロマノフ王朝についての大まかな歴史を絵画を媒体に読むことができ、美しい上にとても楽しい本だね。
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