国家はもはや資本の下僕に:水野和夫『資本主義の終焉と歴史の危機』
わた:会社員時代、上司を含め多くの企業人がグローバリゼーションを口にしていたけど、どれだけの人がその本当の姿を知っていたんだろう。
あめ:ウィン・ウィンの関係、とかしきりに言われたけどね。
わた:グローバリゼーションとはヒト・モノ・カネが国境を超えてプロセスと喧伝されているけど。
あめ:真の姿は「中心」と「周辺」を組み替え続けること。
わた:中心とは利益を吸収するところでかつては帝国や先進国、今は金融街。
あめ:周辺とは新興・後進国で製品の購入先。この周辺がもはやどこにも見当たらなくなっている。
わた:周辺が外に見いだせない場合は資本主義はどうするか。
あめ:なんと国の内部に暴力的に周辺を作り出すのです。
わた:それがアメリカであればサブプライム層で、日本であれは非正規雇用で、EUであればギリシャやキプロス。
あめ:グローバリゼーションという言葉がある前から物の売買は国境を超えて行われておこなわれていたけど、金融のIT化、自由化を得て、とうとう資金が国境を超えるようになった。それがグローバリゼーション。
わた:電子・金融空間では常にマネーは過剰となりバブルを引き起こしやすくなっている。
あめ:だって実物を伴わないマネーだから、それは過剰となるよね。
わた:途轍もない複雑さ(金融商品)と幼児的ともいえる楽観性(実物を伴わない経済。予測が希望があたかも確約された未来であるかのように振舞うこと)が共存しているというのが、すごく歪んだ在り様に感じる。
あめ:資本はもう国を超えているのだから、国内で所得の再配分もしないし、もはや国と資本の利害は一致していない。
わた:だけど国家は資本の尻拭いをしなければならない。バブルが弾ければ公的資金が投入され、それによって経済は縮小し、雇用が打撃を受ける。
あめ:経済の縮小を挽回しようとまたマネーが膨らむから・・・
わた:クリントン政権の財務長官が予言したように「三年に一度バブルが形成」されるんだね。
あめ:現在では利益を上げているのは理解もできない複雑な金融商品ばかりだからそれこそが経済の根幹と思ってしまうけど、あくまでも実物経済が重要。
わた:物を作って、買ってもらう。このサイクルはいつかは行き詰まるよね。
あめ:行き場のないゴミも大問題になっている。
わた:まさにすべてがつながっているね。
あめ:西欧についても一章あてられていて、とても面白かったよ。
わた:ユーロは経済同盟ではなく政治同盟というのは本当にそうだなと思った。
あめ:欧州は英米のような「資本」帝国への道を選ばず、ヨーロッパ統合という理念に基づいた「領土」の帝国化を目指す。
わた:金融帝国化しているのはアメリカ・イギリスと言った海の帝国・アングロサクソンの国だね。
あめ:そのどちらも自国主義へ舵を切っている。
わた:巨大な資本の動きに対して国民国家ではもはや対応できなくなり、国民という枠組みを取り払って国家を大きくすることによってグローバリゼーションに対応しようとしたのがEUだと。
あめ:欧州危機で振り回されているということは、まだサイズが小さいのかもしれない、と著者は言っているね。
わた:第四帝国の誕生だ。
あめ:この本を読んでから注意深く周りを見てみたら、グローバリゼーションに警鐘を鳴らしている見識者は多いんだね。
わた:まったく、己の不明を恥じました。
あめ:資本主義との決別は時間もかかるし多くの痛みを伴いそうだけど。
わた:何世代もかかる闘いになりそうだけど、きっとこの問題を克服できることを信じているよ。
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