この世ならざるものに挑み続けた表現力で音楽を:恩田陸『蜜蜂と遠雷』
わた:やっと読んだ~。
あめ:日本を出る時にkindleに落としてきたけど、読んだら止まらなくなるような気がして生活が落ち着くまで手が付けられず。
わた:恩田さんの青春物がそんなに好みでもなくてね。
あめ:でも読んだら、異形が出てくる、出てくる(笑)。
わた:コンテスタントはみな、異形。ピアノと対峙するとき、みな、異形に変容する。
あめ:蜜蜂王子・風間塵は『常世物語』に出てきても違和感ないよ。
わた:栄伝亜夜もね。彼女の演奏の描写はどれも素晴らしかった。何度も読み返したいような描写。なぜなら彼女は「ギフト」だから。
しかし、心では優劣がつけられたところを見たいのだ。選びぬかれたもの、勝ち残ったもの、ほんの一握りの人間にだけ許されたギフトを目にしたい。
あめ:風間塵はトリッキーで、亜夜は王道。マサルは天才だけど、ちょっと違うタイプだね。自分のオーラをしっかりコントロールしてる。
わた:ずるい人が一人も出てこないのも、恩田さんの作品の魅力なのよね。
あめ:コンクール物だからコンテスタントの足の引っ張り合いとか、演奏のミスとか描きそうなものだけど、そうした邪悪な場面は一切なし。
わた:安心して「ギフト」たちの活躍に没頭できます。恩田さんの強い思いを感じる。
あめ:『人間の最良のかたちが音楽だ』
わた:今まで色々なジャンルでの小説を書いてきた恩田さん、そのテクニックをもって満を持して音楽に挑んだ。
あめ:見えないもの、この世ならざるものに挑んできた著者だからこそ、こんなにも見事に音楽が描けたんだね。
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