「不離怨願、あたご様、五郎子」:『よろずのことに気をつけよ』
川瀬七緒さんのデビュー作。第57回江戸川乱歩賞受賞作品。
巻末におさめられている選評では「呪いに対する理解が甘い」「会話文が多く冗長」と辛口だったけれど、私は純粋に楽しめた。
床下から見つかった呪い札は専門家が見れば「うなじの毛がチリチリと逆立つような」もの。これをつくったものは本気だ、まったく迷いがない、と文化人類学者で呪術を専門にしている中澤は思う。
しかしこの札の材質を調べると、札は何十年も前に床下に埋められたようなのだ。なぜそんな前から呪いの札が埋められていたのか、そしてなぜ、今になって老人は殺されたのか。老人の写真が剥がされたアルバムは何を意味するのか---。
「あたご様」や「五郎子」といった言葉は不気味だし、鶴の喉の塩漬け「鶴水」など民俗学的な不気味さでぐいぐい話を引っ張っていく。
エンディングも意外性と苦みがあって納得の終わり方だった。
受賞作は一番厳しく批評されるのかも。
川瀬さんには、これからも面白い作品をたくさん書いて欲しい。
『よろずのことに気をつけよ』の感想、レビュー(あられさんの書評)【本が好き!】