わた☆あめ 脳内読書会

読書ブログです。ヨーロッパより帰国しました(コロナのばか~!)

日本も橋本さんも揺れに揺れた:『橋本治という立ち止まり方』

2010年、橋本治さんは顕微鏡的多発血管炎という難病で入院します。当初は一ヶ月ほどで済むと思われていた入院は、結局四カ月にも及びました。
自分もじーさんだけど病院はじーさん・ばーさんばかり、と好奇心をもって病院生活を送った橋本さんですが、やはり四カ月もの入院生活で体力が落ちたようで、退院後の文章はどこか元気がない。自分でもがっくりきて自信喪失というか、ぐらぐらしている感じが伝わってきます。

 

そんな中で東日本大震災が起こり、体力がないと驚いたり不安になったりすることもできない、と橋本さんは書いています。
この本の最終章は2011年に書かれたエッセイですが、橋本さんにしては珍しく、政治に対しての怒りを結構直接的に吐露しています。
橋本さんの「分からないものを分からないままに語る」という姿勢は、とても気力・体力が必要なことだったんだなぁと気づかされました。のんきさは充実した気力から生まれるのですね。

 

入院中に「近代文学の文豪の中で一番読まれなくなった」島崎藤村の『夜明け前』を読み、自分がどうして「幕末物」がが好きでないのかよくわかったと橋本さんは言います。あの騒々しく、空回りして噛み合わない激論、その末のテロリズム、その「騒々しさ」はしかし山の中の木曽路の村には影響を及ぼしません。中山道を旅人が通り過ぎていくように『夜明け前』でも「幕末の騒々しさ」は通り過ぎていく。

 

この本には2008年(リーマン・ショック)、2009年(民主党への政権交代)、2010年(難病発症)、2011年(東日本大震災)に書かれたエッセイがおさめられています。日本も橋本さんも揺れに揺れていました。

 

 

橋本治という立ち止まり方 on the street where you live

橋本治という立ち止まり方 on the street where you live

  • 作者:橋本 治
  • 発売日: 2012/12/25
  • メディア: Kindle版
 

 

『橋本治という立ち止まり方 on the street where you live』の感想、レビュー(あられさんの書評)【本が好き!】

 

 

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