銅版画に導かれるそれぞれの夜:森見登美彦『夜行』
わた:初めて森見さんの作品を読んだ。
あめ:失踪ミステリーかと思ったら、パラレルワールド?
わた:旅行記でもあり、怪談でもあり、SFでもあり。
あめ:続きが気になって、もう一気に読んだね。
わた:村上春樹の短編に絵の中の男とタクシーの中で乗り合わせるって話があったよね。それを思い出した。場面が夜で、絵が関連していて・・。
あめ:女の子が失踪した話だけなら読まなかったけど、この銅版画のエピソードを読んで俄然読んでみたくなった。
わた:鞍馬の火祭の夜に失踪した「長谷川さん」。十年後にその時の仲間が集まるんだけど。
あめ:その十年の間に誰もが旅先で『夜行』という銅版画の連作を目にしている。
わた:どの絵にも顔が真っ白な女性が佇んでいる。48作もあって、誰も見たことがないけど『曙光』という対をなす連作がある。
あめ:ほら~、見てみたい~。
わた:48作にも囲まれたら、きっと怖いよ(笑)。
あめ:この話を読んで思ったのは、人ってやっぱり「謎」が好きなんだなってこと。
わた:それは自分が実は謎に囲まれて生きているからだろうね。自分が知り得ることは世界のほんの断面でしかないとわかっている。
あめ:第三夜の津軽がよかったなぁ。自分の津軽旅行を思い出した。なんかあんな奇妙な家の周りを歩いたような気がしてきた(笑)。
わた:山火事の脇を夜行列車で通り過ぎるのもね。なんだかあり得そうでよかった。
あめ:とてつもないものを目にしたけど、通り過ぎるだけで何もできない。
わた:第二夜の奥飛騨では馬篭を旅した時のことを思い出した。駅が暗くてねぇ。
あめ:旅をしたことがない人はいないから、そうやって自分の中の旅をあれこれ思い出して、より生々しく感じるよね。
わた:最終夜の鞍馬。銅版画『曙光』が鮮やかに現れる。
あめ:そうきたか!って思った。
わた:ひとつ言うとしたら、大橋さんがもっと「わかってないまま」の方が私は好きだな。
あめ:「世界の一面しか知り得ない」という断面的な感じがもっとあった方がね。
わた:でもバッドエンドにならなくてよかった。
あめ:朝を感じて終わるのがよかったよね。
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